【読書メモ】NETFLIXの最強人事戦略
普段はnoteでブログを書いているのですが(ぼっち法務|note)、非法務のネタに関しては、こちらに記載しようと思います。
こちらでは仕事全般や最近読んだ本から考えたことについて書いていく予定です。
1.噂のNETFLIX本とは?
さて、今回題材としたいのは、パティ・マッコード著「NETFLIXの最強人事戦略−自由と責任の文化を築く−」(光文社)です。この本に関しては、話題性が高く、既に多くの方がお読みになったかも知れませんが、敢えて取り上げたいと思います。
2.どういった方が読むべきか?
- ともに働く社員が何を求めているか、わからなくなっている管理職や経営者
- 冷めている社員をどう巻き込むか悩んでいる方
にオススメします。
邦訳版のタイトルには「最強人事戦略」とあり、著者も「元最高人事責任者」であるため、人事関連の方が読むべきと思われがちです。勿論人事系の方は必読ですが、元のタイトルは「Powerful: Building a Culture of Freedom and Responsibility」であり、核心は、企業カルチャーなのです。
私も話題性に惹かれて読んだわけですが、私自身、法務担当にも拘らず、所属している部署は人事や総務を管轄する部署のため、総務的な企画にアサインされることがしばしばあります(流石に人事はタッチしませんが)。
こういった何が従業員にとって良いのか、喜ぶのか、を考える際にも参考になるのではないかと思うのです。
3.どこを読むべきか?
最大公約数的に言うならば、第1章〜第4章が示唆に富んでいます。
第5章以降も非常に興味深いのですが、比較的人事政策に特化した内容であるとともに、日本法下では困難と考えられるような方法(例えば、第8章の「円満な解雇の方法」に書かれている内容)があるので、注意が必要です。
4.何を考えさせられるか?
従業員は自律的である?
この本全編を通じて、「本来、従業員は自律的である」ということを前提にした論理展開がされています。
従業員の最大のモチベーションは「成功に貢献すること」であり、「人は仕事に娯楽を求めない」のだと。
そして、仕事の満足度は、従業員特典なんかではなく、「優れた同僚たちと真剣に問題解決にとりくむときや、懸命に生み出した製品・サービスを顧客が気に入ってくれたときにこそ得られる」というのです(こういった従業員に本来備わっている自律性を重視するのは、最近注目される「ティール組織」の考え方にも通じるところがあると思われます)。
こうくると、本当にそんなに従業員は「自律的」なのかということが気になってきます。この点は、私には実際のところ、よくわかりません。
ただ、少なくとも、今の豊かな時代において諸々の従業員特典などが、従業員の自律性を変えるほど、満足度を高めるということは考えにくいのではないでしょうか。
優秀だから、自律的なのか?
こういった話になると、それはNETFLIXに集まるような熱意ある、意識の高い人間だから言える話なのでは?という反論が出てくるかもしれません。
確かに、そういった要因も著者の考えを補強している側面もあるかもしれません。
社員が自律的に行動することができない、もしくはそういった態度を示すことに躊躇するのは、本来人間は楽をしたいと考えているはずで、みんながそんなに自分から頑張ったりするはずはない、といった考えからかと思われます。場合によっては、自分から頑張ろうとする人間をやや異質な者として見がちということに起因すると考えたかもしれません。
しかし、自分から頑張るという「空気」が存在していたらどうでしょうか。
「熱狂」が空気を変える?
ここからは私見になりますが、NETFLIXは、インターネットの発達による事業の転換期の苦悩と困難をその従業員たちにも肌で経験させ、小さな失敗と成功を繰り返した結果、(ひょっとしたら偶然)大きな成長を遂げました。この成長によって従業員には、達成感や自分達が会社の成長に貢献したことで、一種の「熱狂」が生まれた。このため、彼らは会社の中で積極的に動くことに何の躊躇いもなくなった、ということなのではないでしょうか。
そう考えると、NETFLIXにはこういった熱狂を生み出すことに成功したことが最大のカギだったのではないかと思うのです。
こういった自律性を呼び起こす熱狂を従業員特典で代替しようとするのは、邪道中の邪道と著者に映るのは仕方ないように思われます(とは言うものの、本書の著者も従業員特典の類は一通り実施したことがあるようですが)。
我々はどうするのが良いのか
では、NETFLIXのような事業の転換期というわけでもないが、悩みを抱える日本企業はどうすればいいのか、ということになります。
私は、結論として、複数人で共同して案件に取り組み、小さな失敗と成功を肌で経験させることが重要なのだと考えています。
例えば、「これは下の人間が扱うべきではない」として上司が巻き取って解決してしまうような案件、これを複数の部下にも共同して取り組ませるということはどうでしょうか。
なぜなら、こういった難しい案件は、得てして会社にとってもそれなりに重要だったり、タフな案件です。このような案件に上司がアサインする形で、まずは取り組ませてみる。成功すれば会社への影響力が大きい仕事ですから、「貢献できた!」という感情が熱狂のタネになります。仮に失敗してもそもそも難しい案件ですから、適切なフォローさえすれば当該従業員一人に責任を背負いこませることもありません。複数人に、というのはそういった意味もあるわけです。
以上、長々書きましたが、衝撃もあり、考えさせられる書籍でもあるので、是非ご一読してみては如何でしょうか。
また、この書籍の元ネタでもある、NETFLIXの企業文化を凝縮したスライド"Culture Deck"は下記です。興味がある方はこちらもご覧頂くと良いのではないかと思います。
それでは、また!