ぼっち法務のブログ(番外編)

某中小メーカーのひとり法務担当です。ブログの内容は、法務と異なるものが中心です。

【Word小ネタ】定形文書の更新をスムーズに(ASKフィールドを使おう!)

 仕事で主にWordを使用と似たような作業が沢山出てきますが、こういった類似の作業をなんとか効率化できないものか、と色々探ったりします。

 そういったモチベーションの下、今日ご紹介するのは、Microsoft社のWordにおける、ASK(アスク)フィールドというものです。

 

 

ASKフィールドとは?

 ASKフィールドとは、「定形フォーマットの文書に存在する、更新すべき箇所をあぶり出して、効率的に文書を更新できる」コマンドです。

 
利点は何?

 ポイントは、

 ①更新すべき項目を忘れずに更新できる

 ②作業の定型化を進めることができる。

というところです。 

 

 確かに、ワードには、類似の機能として「置換」や「相互参照」があります。ただ、置換は、置換前の記載内容を入力する必要がある点で、やや非効率です。また「相互参照」は、修正時にリンク切れの危険があるため、使う人を選びます。

 

どんな場面で使える? 

 前記の通り、ASKフィールドは、定形フォーマットと相性がいいです。

 例えば、秘密保持契約書(NDA)等、「フォーマットは変わらないけど、都度相手方の会社名や開示目的は変更しなければならない」といった場面。

 いちいちスクロールして修正しても問題ないけど、「ミスを減らしつつ、もう少し機械的にスピードアップできないか」といった問題意識が出てきます。

 

 そんな時に、ASKフィールドです!

 

実際に使ってみる!

 今回は、経産省が公開しているNDAのひな形を用いて①相手方の会社名と②検討目的をスムーズに更新するフォーマットを作ってみます。

(なお、以下はMac OSの画面キャプチャですのでご注意を。)

f:id:one-onlegal:20190105171310p:plain

 

(1)ASKフィールドの入力

 いきなり超重要ポイントですが、どこか余白に、「{ ASK 相手方の会社名 } と入力しましょう。実行すると、この文字列は非表示になるので、どこに入力しても構いません。ここでは、タイトルの下の空いている行に入力してみました。

 但し、この{ }の入力は、【⌘ + F9】によって行ってください。Windowsの場合には【ctr + F9

f:id:one-onlegal:20190105171352p:plain

カーソルを合わせてグレーになれば成功です。

 ちなみに、この"ASK"とは文字通り尋ねるコマンドで、「相手方の会社名に何入力するの?」と更新時に尋ねてくれるようになります(詳しくは(3)で)。


(2)QUOTEフィールドの入力

 次に、実際に相手方の会社名を入力したい場所に{ QUOTE { 相手方の会社名 } }」と入力しましょう。

 ここでも、{ }の入力は、2つとも【⌘ + F9】によって行ってください。Windowsの場合には同じく【ctr + F9】です。

f:id:one-onlegal:20190105172851p:plain

同じく、うまく行っていればグレーに網掛けされます。

 なお、ここで末尾の署名欄の会社名のところにも同じQUOTEフィールドをご入力頂くと良いと思います。

 

(3)ここで注意!

 ASKとQUOTEは、2つで1セットなので、「{ ASK 相手方の会社名 }{ QUOTE { 相手方の会社 } }のように、表記がぶれていると、この後の動作が上手くいきません。

 必ず確認しましょう!

 

(4)更新してみる

 それでは更新してみましょう。

 【⌘ + A】で文書全体を指定し(Windowsの場合は【ctr + A】)、

f:id:one-onlegal:20190105173733p:plain

 【F9】でフィールドの更新を実施します(右クリック後に「フィールドの更新」を選んでも同じです)。

 すると、

f:id:one-onlegal:20190105173855p:plain

 ポップアップウィンドウが表示され、「相手方の会社名」と"ASK"してきます。
 ここに、実際の会社名を入れてOKをクリックすると、その会社名が、QUOTEフィールドを入力した箇所に出力されます。

f:id:one-onlegal:20190106165411p:plain

ここでは仮に「株式会社あいての会社」と入力しています。

 さて、上手く更新されたでしょうか。割と単純ですよね?

 

 同じように、NDAの「検討目的」についても{ ASK 検討目的 }{ QUOTE { 検討目的 } }を入力してあげれば、フィールド更新機能によって常に検討目的も忘れずに更新することができるようになります。

f:id:one-onlegal:20190106170421p:plain

f:id:one-onlegal:20190106170253p:plain

ASKが複数ある場合には、フィールド更新すると、順に"ASK"してきます。

 ※上述の通り、フィールド更新すると、ASKフィールドは自動的に非表示になります。再度確認したい場合は、右クリックから「フィールドの表示/非表示」を選択して、再表示してください。

 ※(2019/1/7追記)ちなみにこのASKフィールドは、残念ながら、Word Online上では入力、編集はできないようです。

 

 最後に

 私もこの機能を繰り返し業務で活用しているのですが、一度フォーマットを作ってしまえば、思っていた以上に効率が上がったという実感があります。

 

 既にお気付きの方も多いとは思いますが、このASKフィールドの用途は、契約書に限られません。例えば規程、注文書・請書など、あらゆる定形フォーマットと呼ばれる書類に応用可能かと思います。

 

 今日からでも、ぜひ活用してみてください!

 

【お仕事】他者が頑張りを見てくれないことを嘆かない

 先日、Twitter内田樹著「寝ながら学べる構造主義」(文春新書)をご紹介頂き、勝手に乗せられて、プノンペン行きの飛行機内で拝読させて頂きました。

 

 無論、私は専門家ではいので、「構造主義とは何ぞや」という点に深入りするのは、危険極まりないので、考えたことだけを簡単に記載します。
 
 同書の中にある、下記の一節は、ビジネスパーソンにとって重要なポイントです。
 
 「ネットワークの中に投げ込まれたものが、そこで「作り出した」意味や価値によって、おのれが誰であるかを回顧的に知る。主体性の起源は、主体の「存在」にではなく、主体の「行動」のうちにある。これが構造主義のいちばん根本にあり、すべての構造主義者に共有されている考え方です。」
 
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 つまり「自分が誰なのか?」という問いの答えは、これまでの自らの残した成果や実績、これらの過程(=過去の事実)によってわかるということです。自己を「過去の事実によって形作られる構造物」として認識すると言い換えても良いのかもしれません。
 就活の際に、「まずは自分の歴史年表を作ってみましょう」といったアドバイスを受けるのは、自分が何たり得るかを探るアプローチの一種なのでしょう。
 
 ここで、自分ですら過去の事実から自己を規定するのですから、他者から見る場合は更にその傾向が強まるといって間違い無いでしょう。
 但し、他者は、成果や実績に至る「過程やプロセス」を通常見ていません。仮に見ていたとしても、仔細まで記憶していません。従って、他者との関係でいうと、その人がどんな成果や実績を残したのか、ということでしかインパクトを残せないことになります。
 
 このため、仮に何か業務上で失敗してしまうと、他者には、その失敗という結果だけが印象に残り、「自分がどれだけ頑張ったか」という過程やプロセスは評価の対象になりません。
 よく結果が全てだ、と言われることの一つの根拠は、自分の事実の認識内容他者の事実の認識内容の間にこうした差があるからです。
 

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 もっともこの差は逆手に取ることもできます。それが「ハッタリ」というものです。
 
 例えば、私の業務である法務で言えば、同僚は、「私が個別の〇〇法を一体どれだけ勉強してきたのか」なんて知る由も無いわけです。
 ただ、私が「やれる」と宣言し、現実に一定以上のアウトプットを出せば、同僚は「この人は〇〇法もよく理解しているのだな」となるわけです。
 
 勿論明らかな嘘はどこかで破綻する危険があるので取るべきではないですし、最終的に一定以上のアウトプットを出すことは必須ですが、その過程でハッタリに自分が追いつくように努力をする以上、結局は中身も伴う成長に繋がります。ハッタリが「過去の事実」を後から作る手伝いをしてくれるわけです。
 私が目にしてきたいわゆる仕事のできる方は、このハッタリの設定の仕方が上手い方が多いですね。
 
 現状の業務内容から一歩踏み出したい方は、そういった自己と他者の認識の差を上手く利用して、次のステージに上がるよう「ハッタリ」を試みるのも手段の一つだと思います。是非市場価値を高めて行きましょう!

【読書メモ】NETFLIXの最強人事戦略

 普段はnoteでブログを書いているのですが(ぼっち法務|note)、非法務のネタに関しては、こちらに記載しようと思います。
 こちらでは仕事全般や最近読んだ本から考えたことについて書いていく予定です。

1.噂のNETFLIX本とは?

 さて、今回題材としたいのは、パティ・マッコード著「NETFLIXの最強人事戦略−自由と責任の文化を築く−」(光文社)です。この本に関しては、話題性が高く、既に多くの方がお読みになったかも知れませんが、敢えて取り上げたいと思います。

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2.どういった方が読むべきか?

  1. ともに働く社員が何を求めているか、わからなくなっている管理職や経営者
  2. 冷めている社員をどう巻き込むか悩んでいる方

にオススメします。

 

 邦訳版のタイトルには「最強人事戦略」とあり、著者も「元最高人事責任者」であるため、人事関連の方が読むべきと思われがちです。勿論人事系の方は必読ですが、元のタイトルは「Powerful: Building a Culture of Freedom and Responsibility」であり、核心は、企業カルチャーなのです。
 
 私も話題性に惹かれて読んだわけですが、私自身、法務担当にも拘らず、所属している部署は人事や総務を管轄する部署のため、総務的な企画にアサインされることがしばしばあります(流石に人事はタッチしませんが)。
   こういった何が従業員にとって良いのか、喜ぶのか、を考える際にも参考になるのではないかと思うのです。
 

3.どこを読むべきか?

 最大公約数的に言うならば、第1章〜第4章が示唆に富んでいます
 
 第5章以降も非常に興味深いのですが、比較的人事政策に特化した内容であるとともに、日本法下では困難と考えられるような方法(例えば、第8章の「円満な解雇の方法」に書かれている内容)があるので、注意が必要です。

 

4.何を考えさせられるか?

従業員は自律的である?

 この本全編を通じて、「本来、従業員は自律的である」ということを前提にした論理展開がされています。
 
 従業員の最大のモチベーションは「成功に貢献すること」であり、「人は仕事に娯楽を求めない」のだと。
 そして、仕事の満足度は、従業員特典なんかではなく、「優れた同僚たちと真剣に問題解決にとりくむときや、懸命に生み出した製品・サービスを顧客が気に入ってくれたときにこそ得られる」というのです(こういった従業員に本来備わっている自律性を重視するのは、最近注目される「ティール組織」の考え方にも通じるところがあると思われます)。
 
 こうくると、本当にそんなに従業員は「自律的」なのかということが気になってきます。この点は、私には実際のところ、よくわかりません。
 
 ただ、少なくとも、今の豊かな時代において諸々の従業員特典などが、従業員の自律性を変えるほど、満足度を高めるということは考えにくいのではないでしょうか。
 

優秀だから、自律的なのか?

 こういった話になると、それはNETFLIXに集まるような熱意ある、意識の高い人間だから言える話なのでは?という反論が出てくるかもしれません。
 確かに、そういった要因も著者の考えを補強している側面もあるかもしれません。
 
 社員が自律的に行動することができない、もしくはそういった態度を示すことに躊躇するのは、本来人間は楽をしたいと考えているはずで、みんながそんなに自分から頑張ったりするはずはない、といった考えからかと思われます。場合によっては、自分から頑張ろうとする人間をやや異質な者として見がちということに起因すると考えたかもしれません。
 しかし、自分から頑張るという「空気」が存在していたらどうでしょうか。
 

「熱狂」が空気を変える?

 ここからは私見になりますが、NETFLIXは、インターネットの発達による事業の転換期の苦悩と困難をその従業員たちにも肌で経験させ、小さな失敗と成功を繰り返した結果、(ひょっとしたら偶然)大きな成長を遂げました。この成長によって従業員には、達成感や自分達が会社の成長に貢献したことで、一種の「熱狂」が生まれた。このため、彼らは会社の中で積極的に動くことに何の躊躇いもなくなった、ということなのではないでしょうか。
 
 そう考えると、NETFLIXにはこういった熱狂を生み出すことに成功したことが最大のカギだったのではないかと思うのです。
 こういった自律性を呼び起こす熱狂を従業員特典で代替しようとするのは、邪道中の邪道と著者に映るのは仕方ないように思われます(とは言うものの、本書の著者も従業員特典の類は一通り実施したことがあるようですが)。
 

我々はどうするのが良いのか

 では、NETFLIXのような事業の転換期というわけでもないが、悩みを抱える日本企業はどうすればいいのか、ということになります。
 私は、結論として、複数人で共同して案件に取り組み、小さな失敗と成功を肌で経験させることが重要なのだと考えています。
 
 例えば、「これは下の人間が扱うべきではない」として上司が巻き取って解決してしまうような案件、これを複数の部下にも共同して取り組ませるということはどうでしょうか。
 なぜなら、こういった難しい案件は、得てして会社にとってもそれなりに重要だったり、タフな案件です。このような案件に上司がアサインする形で、まずは取り組ませてみる。成功すれば会社への影響力が大きい仕事ですから、「貢献できた!」という感情が熱狂のタネになります。仮に失敗してもそもそも難しい案件ですから、適切なフォローさえすれば当該従業員一人に責任を背負いこませることもありません。複数人に、というのはそういった意味もあるわけです。
 
 以上、長々書きましたが、衝撃もあり、考えさせられる書籍でもあるので、是非ご一読してみては如何でしょうか。
 
 また、この書籍の元ネタでもある、NETFLIXの企業文化を凝縮したスライド"Culture Deck"は下記です。興味がある方はこちらもご覧頂くと良いのではないかと思います。

www.slideshare.net

 それでは、また!